アンモニア燃料利用舶用ディーゼルエンジンのN2O発生について(考察)
重油に比べ燃焼時にGHG(温室効果ガス)排出の少ない燃料へ転換することでGHG排出削減が世界的に加速している。主の候補として液体アンモニアがあげられる。
しかしアンモニアは燃焼時においてCO2は発生しないものの未燃アンモニア、N2O(一酸化二窒素)、NOx発生の問題があり、特にN2OはCO2の約300倍の温室効果があると言われている。
N2O発生並びに現状での対応について考察する。
1.重油とアンモニア混焼舶用ディーゼル機関によるN2O発生実験
国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所 海上技術安全研究所の報告書を基にまとめた。
(1) 実験装置及び試験内容
図1 実験装置概要図
アンモニア供給設備は試験用単気筒ディーゼル機関出力(7.7kW)の20%出力(1.54kW)
以上の出力を得られるガスを供給可能である。
機関を軽油のみを用いて運転後、アンモニアガス噴射を行う。
(2) 排ガス後処理装置
脱硝触媒装置の後流に酸化触媒装置を設置する。酸化触媒装置は主に未燃アンモニアを除去するために設置している。
図2 脱硝触媒及び酸化触媒装置
(3) 排ガス後処理装置の効果
図3 後処理装置による排気ガス削減
酸化触媒装置は未燃アンモニアだけでなくCOの除去効果も確認できた。
2.実験結果
後処理装置の採用による期待されたN2O削減は見られなかった。→N2O濃度は変化なし
なお、酸化触媒装置により未燃アンモニア、COは除去できた。脱硝触媒装置によるNOxの削減効果も確認できた。
3.アンモニア燃焼におけるN2O発生について
アンモニア燃焼において排気ガスのN2O濃度は微量であり、環境への影響は軽微と考えられる。
なお、アンモニア燃焼機関が今後増加することにより環境への影響が今後重要視される可能性はある。アンモニア燃焼におけるN2O発生の抑制・除去は今後の課題である。
4.現状の地球環境に対するN2Oの影響 (参考資料)
地球上発生する温室効果ガス(GHG)においてN2Oの占める割合は6%(CO2換算)である。
またN2Oの発生原因の59%は農業分野となる。化石燃料はN2O発生量の約10%である。その他多い分野は河川や水処理施設などとなる。
従ってN2Oを削減するためには農業分野で減らす必要がある。
現在農業分野で検討されているのは大豆などのマメ科植物の根粒菌を活用し微生物を用いてN2O→N2に転化する方法などがある。
図 5 農耕地(土壌)におけるバイオ作用による N₂O 発生のメカニズム
出典:東北大学南澤教授の監修のもとNEDO 技術戦略研究センター作成(2021)